2024年2月1日 更新

ジョブローテーションとは?意味や目的とメリット・デメリット、成功事例を紹介

ジョブローテーションとは、戦略的に従業員の配置転換を行う制度です。従業員の適正を判断しやすくなる、社内の風通しが良くなるなどメリットが多い一方で、効果的に取り入れないとかえって悪循環を生んでしまう可能性も。この記事では、ジョブローテーションの意味、メリットとデメリット、向いている企業の傾向、実際の成功事例を紹介します。

戦略的な職務異動「ジョブローテーション」とは

明確な目的をもって人事異動を行うジョブローテーション。まずは詳しい意味や目的、従来の人事異動との違いを解説します。

ジョブローテーションの意味

ジョブローテーションとは、従業員が所属する部署や職務を定期的に変える制度のことをいいます。他部署への異動、勤務地の変更、同部署内での業務内容の変更など、パターンはさまざま。人材研修の1つとして捉えられていて、配置転換とは異なり数ヵ月〜数年という長期的なスパンで戦略的に行われるのが特徴です。

ジョブローテーションを行う目的

ジョブローテーションを行う目的は大きく3つあります。

①人材育成 多様な職務を経験させ、適性や本人の意向を見極めて適切な配置を行う
②全体像の把握 幅広い業務を知ることで、企業の全体像が掴めるようになる
③属人化防止 定期的に人材を入れ替えることで業務が属人化するのを防ぎ、標準化を促す

人事異動とジョブローテーションの違い

人事異動とジョブローテーションでは、目的が異なるのが大きな違いです。人事異動とは、従業員の配置転換をしたり役職を与えたりすることにより組織内での役割を変えることを指し、組織の活性化を目的に行うのが一般的です。一方、ジョブローテーションは従業員本人の教育を主な目的として行われます。

ジョブローテーションを人事制度に導入するメリット

ジョブローテーションを導入すると、従業員の適正にマッチした配属が可能になる、部署を超えたネットワークが生まれるなどの効果が期待されています。ジョブローテーションのメリットを紹介します。

適材適所の人材配置ができる

実際にいくつかの業務を経験するなかで従業員の適性を見極められ、適材適所の人材配置が行えるようになります。未経験業務を含めたさまざまな業務に触れると、新しい学びや発見があり、従業員各自のスキルの向上やモチベーションアップも期待できるでしょう。とくに適性がまだ掴みきれていない新入社員は、ジョブローテーションを通して経験を積むことで会社の期待と本人の希望とのミスマッチをなくし、早期退職を防止できます。

部署を超えた交流が盛んになる

ジョブローテーションで異動した社員が部署間の橋渡し役となり、部署を超えた新たなネットワークが構築できます。これまで交流がなかった部署とも連携が容易になるので、業務を円滑に進めやすくなるだけではなく社内に一体感が生まれ、生産性の向上につながります。

イノベーションが生まれやすくなる

他部署との交流が増えると広い視野が育まれ、これまで思いつかなかったアイディアが浮かんだり新たな課題が見つかったりと変革が起きやすくなります。部署の人員を固定していると、どうしても知識や考えは偏ってくるもの。多角的な視点から業務を見直すことで、企業の成長に欠かせないイノベーションが生まれるかもしれません。

ジョブローテーションを人事制度に導入するデメリット

フォローに一定の期間やコストがかかる、長期的な習熟が難しいなど、ジョブローテーションはいくつかの課題も抱えています。効果的に取り入れられるよう、デメリットを理解しておきましょう。

フォローアップ体制を整える必要がある

ジョブローテーションにより異動した従業員が新たな業務に就くにあたり、受け入れる側はフォローアップ体制を整えておく必要があります。業務に慣れるまでには一定の期間を要するため、その間の生産性が下がる例も少なくありません。生産性への影響をなるべく減らすためには、スキルの高い従業員を指導係につける、スムーズに引き継ぎができるようマニュアルを作成するなどの対策を行いましょう。

スペシャリストの育成が難しい

一定期間で業務内容が変わるので、業務を一通りできるようになっても深い部分までの理解は難しいでしょう。ジョブローテーションを繰り返していると、1つの分野においてスキルの蓄積や専門知識を得るレベルまでには達しづらいのが実情です。そのためスペシャリストの育成を目指すなら別の方法を検討する必要があります。ジョブローテーションはあくまでも幅広い知識を有するジェネラリストの育成向けの制度と捉えておいてください。

退職となった場合の損失が大きい

異動の度に教育コストが発生するので、仮にジョブローテーションで育てた従業員が退職となった場合はその分損失が大きくなります。とくに長期的なプロジェクトに就いてスキルの習熟をしたいと考えている従業員の場合、1つの業務をじっくりと行えない状況に不満が溜まり、ジョブローテーション自体が退職の原因になってしまうおそれも。従業員の退職を防ぐためには、定期的な面談を行い本人の希望とすり合わせを行うことが大切です。

ジョブローテーションが向いている企業/向いていない企業の特徴

規模が大きい企業ほど、ジョブローテーションの良い影響を受けやすい傾向があります。ジョブローテーションが向いている企業、向いていない企業の特徴を紹介します。

ジョブローテーションが向いている企業

ジョブローテーションが向いている企業の特徴は、以下を参考にしてください。


  • 1つの事業に複数の部署が関わっている企業

  • 企業文化を浸透させ、組織全体の統一を図りたい企業

  • 部署同士の分断を生むセクショナリズムを防止したい企業


ある程度規模が大きくさまざまな利害関係が生まれやすい大企業では、風通しを良くするためにジョブローテーションが活かせます。

ジョブローテーションが向いていない企業

ジョブローテーションが向いていない企業には、以下のような特徴があります。


  • 専門性の高い業務が多い企業

  • 長期的なプロジェクトを多く扱う企業

  • 社員数の少ないスタートアップ企業、ベンチャー企業


一定の知識が必要な業務や長期的な業務においては、担当者が頻繁に変わることは望ましくありません。また、社内のコミュニケーションに問題のない小規模な会社は、かえってデメリットの方が大きくなる可能性があります。

【立場別】ジョブローテーションの成功事例

しっかりとした目的をもって導入するのがジョブローテーション成功のコツ。一定の効果があったとされる成功事例を紹介します。

新入社員向けの事例

新入社員向けには、業務の全体像を把握させる、適材適所の人材配置を行うなどの目的でジョブローテーション制度を採用している企業が多いようです。

<実際の事例>


  • 配送会社:本配属の前に現場での実務を経験させる

  • システム開発会社:関連企業の業務を経験し、自社の全体像や強みを知る

  • 食品メーカー:複数の業務を経験させ、従業員の能力を最大限に活かす人材配置を行う


中堅クラス向けの事例

長年同じ部署で働いている中堅クラス向けには、視野を広げる、部下への接し方を学ぶ目的でジョブローテーションを取り入れると効果的です。

<実際の事例>


  • 建設会社:工事、営業、設計など職種の異なる部署に配属し、コミュニケーションの活性化、業務の効率化を図る


ジョブローテーションを効果的に導入しマルチな人材を育てよう

幅広い分野に精通した人材を育てるのに効果的なジョブローテーション。業務の全体像を把握した上で適材適所の人材配置を行うことで、生産性の向上や従業員自身のモチベーションアップにもつながります。まずは自社に向いている制度か見極め導入を検討しましょう。

※記載の情報は、2024年2月時点の内容です。