2022年8月1日 更新

「AQ(逆境指数)」とは|AQを決める要素・高める方法を徹底解説

「AQ」は、逆境に直面したときの心の強さやストレスへの耐性を表す指標です。AQのレベルが高ければ高いほど、日常でもビジネスの場でも逆境に強いと言えます。本記事では、AQの概要、AQを決める要素、評価レベルなどに加え、リーダークラスに求められるAQレベルやAQを高める方法を解説します。

AQとは?

まずは、AQの意味やAQが注目されるようになった背景、EQ・IQとの違いについて理解しておきましょう。

AQの意味

AQは「Adversity Quotient」の頭文字を取った略称で、日本語では「逆境指数」と呼ばれます。逆境における対応力を数字で表したものです。

AQが注目されるようになった背景

AQは、組織コミュニケーション・組織開発の分野で博士号を取得しているハーバードビジネススクールの研究者、ポール・G・ストルツ氏が提唱し、注目を集めました。欧米で知られるようになり、その後日本でも組織開発や人材育成などの分野で注目されるようになりました。

EQ・IQとの違い

EQは「Emotional Intelligence Quotient」の略称で、「心の知能指数」とも呼ばれます。他者の感情を的確に読み取ったり、自分の感情をコントロールしたりする能力のことです。IQは「Intelligence Quotient」のことで、日本語では「知能指数」と呼ばれます。人の先天的な知能レベルを数値化したものです。

AQ・EQ・IQはそれぞれ異なる事柄の指数であり、IQは先天的なものですが、EQやAQは後天的に高められます。

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AQを決める4つの要素「CORE」

AQを決めるのは「CORE」と呼ばれる4つの要素です。ここでは、それぞれの要素について解説します。

【C】コントロ―ル(Control)

逆境において自分自身をどれだけコントロールできるか、またその逆境をどれだけプラスに変えられるかを意味します。境遇を変化させる力とも言えるでしょう。

【O】責任(Ownership)

逆境にどれだけ責任を持って立ち向かっていけるかを測る要素です。他者や環境などのせいにせず、自分の問題として対応できるかが問われます。

【R】影響の範囲(Reach)

逆境が今後の人生にどれくらいの影響を与えると考えるかを意味します。影響が大きいと考える人ほどプレッシャーや不安を感じ、怠慢や無関心につながりやすいでしょう。反対に影響が小さいと考える人は逆境に立ち向かおうという気持ちが強く、問題解決能力も高いと考えられます。

【E】持続時間(Endurance)

逆境がどれくらいの時間持続すると考えるかを表すものです。長く続くと考える人ほど逆境への耐性が低く、短いと考える人ほど耐性が高い傾向があります。

AQの評価レベル・行動パターン

前章で説明した「CORE」を踏まえ、具体的なAQの評価レベルや逆境に陥ったときの行動パターンを解説します。自分はどのレベル・行動パターンに当てはまるか、考えてみてください。

5段階の評価レベル

AQの評価レベルは次の5つです。

レベル1 逃避(Escape) 逆境から逃げ出す。
レベル2 生存(Survive) なんとか生き残ろうとし生存する。
レベル3 対処(Cope) 逆境に振り回されながらもとりあえず対処する。
レベル4 管理(Manage) 逆境を管理し、自分で解決しようとする。
レベル5 滋養(Herness) 逆境を利用して成長に結びつける。

3つの行動パターン

逆境における行動パターンは主に3種類です。山登りで険しい山に直面したときの行動に例えられています。

脱落組    逆境に立ち向かうことを諦める。また、諦めた事実を認められず責任転嫁する傾向がある。
キャンパー 逆境に対して「何とかしなければ」という気持ちはあるが、逆境のレベルによっては安定を優先する。現状を維持しようとする特徴がある。
登山家    逆境に対して果敢に立ち向かい、頂上を目指し登り続ける。逆境をチャンスだと考え、前向きに解決策を探る。

企業がリーダークラスに求めるAQのレベル・行動パターン

組織においては、キャンパーに当たる行動パターンの人が多いと言われています。しかし、企業がリーダークラスの人材に求めるのは、積極的に問題解決に向けて動く能力。評価レベルであれば4以上、行動パターンであれば登山家です。リーダークラスを目指す人で、企業が求めるAQのレベルに達していない場合は、AQを高めていく必要があります。

AQを高める方法

先に述べた通り、AQは先天的に決まっているものではないため、自分で高めていくことが可能です。AQを高める具体的な方法を見ていきましょう。

逆境をポジティブに捉える

AQが高い人に共通する特徴は、ポジティブであることです。逆境を必要以上に深刻に受け止めると、ネガティブな気持ちに支配されやすくなります。AQを向上させるには、「大丈夫」「なんとかなる」と少々楽観的に状況を肯定できる強いメンタルを持つのがポイントです。

トレーニングのため、日頃から肯定的に物事を考える癖をつけると良いでしょう。悪い状況に直面しても悲観的にならず、「好転できる可能性があるチャンス」と捉えてください。

周りへの感謝と笑顔を意識する

逆境を必ずしも自分1人で切り抜ける必要はありません。例えば仕事においては、チーム全体で逆境に向かっていけます。自分1人ですべて背負い込む必要はないと考えると、前向きな気持ちになれるでしょう。

一緒に逆境に立ち向かってくれる周りの人に信頼を寄せ、感謝の気持ちを持つこともAQを高める方法のひとつ。いつも笑顔を絶やさない人は気持ちに余裕があり、周りへの感謝を抱きやすいものです。感謝と笑顔を意識することで、AQアップを期待できるでしょう。

AQを下げる行動

最後に、AQを下げる行動について押さえておきましょう。ここで紹介する行動をとらないよう、日常の中で意識してみてください。

周囲に負の感情をぶつける

怒りなどの負の感情を周囲にぶつけるのは、自分の気持ちがコントロールできていない証拠です。AQを下げるだけではなく、人間関係に悪影響を及ぼす可能性があります。特にリーダーとしてチームをまとめる立場にいる場合は、チームのメンバーに負の感情をぶつけないよう注意しましょう。チーム全体の士気が保てずパフォーマンスが低下します。

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失敗することを恐れて挑戦しない

失敗を避けるため、挑戦すらしないというパターンも危険です。AQは経験を積むことで高められると言われているため、逆境に立ち向かう経験が少ないままだと、いつまでたってもAQは上がりません。

失敗は誰でもするもの。失敗を恐れず、失敗したらそれを繰り返さないよう気を付けながら、逆境に立ち向かっていきましょう。

AQを高めて逆境にも力強く立ち向かっていこう

AQを高めることで、どんなときでも心を乱したりストレスに押し潰されたりすることなく、落ち着いて対処しながら自分の成長へとつなげていけるでしょう。高いAQはリーダーに求められるもののひとつ。リーダークラスを目指している人は、自分の現在のAQレベルを分析し、AQを高める行動を意識してみてください。

※記載の情報は、2022年7月時点の内容です。

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