2023年11月14日 更新

トータルヘルスプロモーションプラン(THP)とは。導入のメリットを解説

トータルヘルスプロモーションプランとは、厚生労働省が推進する健康保持増進プログラムです。すべての従業員が若い時から身体と心の健康を維持するために支援するのが目的とされています。この記事ではトータルヘルスプロモーションプランとは何か、注目される理由、導入のメリットと導入方法、実際の事例について解説します。

トータルヘルスプロモーションプランとは

トータルヘルスプロモーションプラン(THP)は、厚生労働省が主導する健康保持増進プログラムです。まずは、トータルヘルスプロモーションプランの概要と目的について見ていきましょう。

トータルヘルスプロモーションプランの概要

トータルヘルスプロモーションプラン(Total Health Promotion Plan)とは、1988年に労働安全衛生法の改正により始動した職場内の健康保持増進プログラムです。頭文字をとってTHPと略されることもあります。トータルヘルスプロモーションプランは義務化はされていないものの、企業の努力義務として掲げられています。

トータルヘルスプロモーションプランの目的

すべての従業員が若い時から身体と心の健康を維持し、支援することがトータルヘルスプロモーションプランの目的です。具体的には、健康測定結果報告書の提供や健康指導を行います。健康経営と似ていますが、企業の利益や生産性を追求するのではなく、従業員個人の健康とQOL(Quality of Life)の向上を目指すという点が異なります。

トータルヘルスプロモーションプランが注目される理由

昨今の高齢化や雇用の多様化などによって心身に不調を感じる人が増えており、トータルヘルスプロモーションに注目が集まっています。また、企業には従業員が健康的に業務を行えるよう協力していくことが求められています。

定期健康診断の有所見率が増加したため

60歳以上の雇用者が増え従業員の高齢化が進むと、慢性疾患のリスクが上がったり、定期健康診断では項目に異常がある人が増えたりと健康に不安のある人が増えます。そのため、企業はこれまで以上に従業員の健康への配慮が求められます。

職場でストレスを感じる人が増加したため

職場にストレスを感じる人が増加しているのも理由のひとつです。令和4年「労働安全衛生調査」によると、職場でのストレスを感じる人は82.2%という結果になりました。

成果へのプレッシャー、雇用形態の多様化、職場環境の変化、人間関係の課題などが要因とされています。業務での成果達成が強調されるのも、ストレス源のひとつ。また昨今は働き方が多様化し、ワークライフバランスの取り方が難しくなったことも要因になっています。

生活習慣病患者が増加したため

厚生労働省「国民生活基礎調査」によると、人口1,000人に対し通院患者数は417人という結果になりました。生活習慣病患者は年々増加しています。

疾患の内容は主に「糖尿病」「高血圧症」「肥満症」「歯の病気」「目の病気」など。不健康な食事や運動不足などの生活習慣の乱れにより、生活習慣病のリスクが高まったのが原因でしょう。従業員の健康的な食事や適度な運動、喫煙の抑制など、トータルヘルスプロモーションプランを通じて生活習慣の意識改善を行う必要があります。

トータルヘルスプロモーションプランを導入するメリット

トータルヘルスプロモーションプランは、従業員の心身の健康を促進するだけではありません。医療費の削減、従業員のモチベーションの向上、離職率の低下、企業のイメージアップなど、企業にとってもメリットがあります。トータルヘルスプロモーションプランを導入するメリットを見ていきましょう。

医療費の削減

従業員が健康であることは、会社の医療費負担の軽減につながります。従業員が医療機関を受診する頻度が減ると、企業の労災手続きにかかる人件費や入院時の休業手当といった費用も削減可能です。

仕事に対するモチベーションの向上

心身が健康であると仕事への意欲が高まります。その結果、業務品質や生産性が向上し、さらにモチベーションが上がる良い循環が生まれるでしょう。

離職率の低下

トータルヘルスプロモーションプランによって従業員のストレスや過労を防げれば、病気やメンタルの不調による退職者を減らせるでしょう。退職者の減少は、求人や人材育成のコスト削減につながります。

企業のイメージアップ

従業員の健康を配慮をすると、企業のイメージアップに貢献します。企業のイメージアップは、商品が売れるきっかけになる以外に、優秀な人材が集まりやすくなるメリットも。

経済産業省の健康経営優良法人認定制度に認定されると優良な経営の企業と評価され、社外からの評価や支持が上がります。

トータルヘルスプロモーションプランの導入方法

企業がトータルヘルスプロモーションプランを導入する際は健康測定、運動指導、メンタルヘルスケア、栄養指導、保健指導の5つのステップが基本です。トータルヘルスプロモーションプランの具体的な導入方法について解説します。

健康測定

定期的に従業員の健康診断を行い、健康状態を把握しましょう。診断結果のフィードバックと、生活習慣の改善や健康指導を導入することで、それぞれが健康について考える機会が増えます。

運動指導

リモートワークが増えている昨今は、運動不足に陥っている人も少なくありません。運動指導を取り入れ、従業員の運動不足を防止をしましょう。運動実践担当者(ヘルスケア・リーダー)を取り入れてサポートしていく形が一般的です。従業員が自分に合った運動習慣を身につけるきっかけになります。

メンタルヘルスケア

人間関係やプライベートな悩みなどからメンタルの不調を防ぐため、心理相談担当者(心理相談員)を導入する方法もあります。従業員がストレスを抱えているケースが増え、メンタルの不調が欠勤や離職につながることも。企業の中に心理相談担当者がいることで、自分自身のストレスや不調に向き合うきっかけになります。

栄養指導

健康診断の結果をもとに、栄養指導担当者からの栄養指導を行います。実際には指導をするだけではなく、従業員の福利厚生として社員食堂でバランスの良い食事を提供する企業もあります。

保健指導

保健指導担当を導入し、健康診断の結果をもとに生活改善のための指導を行います。指導内容の主な例として、睡眠時間の確保や歯周病予防のための口腔ケア、喫煙やアルコール飲料の健康被害などが挙げられます。

トータルヘルスプロモーションプランを導入した企業の事例

最後に、実際にトータルヘルスプロモーションプランを導入した企業の事例について紹介します。

医療費の減少につながった例

労働者数が約7,000人の機械部品製造業では、トータルヘルスプロモーションプランの導入により、労働者の欠勤と医療費の減少に成功しました。取り入れた施策内容はトータルヘルスプロモーションプラン推進委員会の設置、ヘルスケア・リーダーの育成、健康教室やウォークラリーなど。労働者達の健康意識が高まり運動習慣が身についたことで、傷病による欠勤日数と医療費の減少につながりました。

休職者、離職者が減少した例

衣料製造小売業では、メンタルヘルス対策に重きを置いたトータルヘルスプロモーションプランを行いました。衛生管理者・産業カウンセラー資格所持を所持する人事担当者が各店舗を訪問し、全員面談などを実施。面談を行うことで、休職や退職になる前に問題を把握して改善を図れます。結果として、人間関係等を理由とする休職者や離職者が減少しました。

事業所ごとのランキング制度を導入した例

大手総合電機メーカーはWeb上で健康調査を実施しました。データを数字化し、生活習慣などを評価するランキング制度を導入。事業所ごとのランキングを公表し、生活習慣の改善を考える機会につながりました。

評価項目は、睡眠、適正体重、運動習慣、喫煙習慣など。ポイント制度を採用し、ポイントに応じて賞品交換ができるという仕組みをとっています。

トータルヘルスプロモーションプランで従業員の健康を促進しよう

トータルヘルスプロモーションプランを導入すると、従業員の心身の健康を維持してQOLを上げるだけでなく、モチベーションアップや企業のイメージアップにもつながります。導入事例を参考に、トータルヘルスプロモーションプランに取り組んでみてはいかがでしょうか。

※記載の情報は、2023年11月時点の内容です。

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