2022年12月12日 更新

今注目の【デジタルヒューマン】とは|メリットや課題、活用事例を紹介

デジタルヒューマンは、人間に近い容姿や動きが特徴のAIアバター。さまざまな企業で業務の自動化が進む中、人間味のある表情やコミュニケーションができることから、接客スタッフやショッピングアシスタントなどに活用されています。本記事では、デジタルヒューマンが注目されている理由や、メリット・デメリットを解説。今後の課題や活用事例も紹介します。

注目を集めるデジタルヒューマンとは

人間は相手とコミュニケーションをとる時に、表情や話し方、声のトーンを重要視します。デジタルヒューマンとは、人間に近い容姿、動きが特徴のCGを駆使した3Dアバター。文字だけでやりとりするチャットボットとは異なり、人間と同じような表情や声のトーンで会話ができます。

既に、接客や顧客対応などに用いられており、質問をすれば画面の中でデジタルヒューマンが笑顔で受け答えをしてくれます。

デジタルヒューマンの2つのタイプ

デジタルヒューマンには、一方向のみのコミュニケーションが可能なタイプと、双方向で可能なタイプがあります。それぞれの違いを解説します。

1. 一方向的なコミュニケーションをとるタイプ

デジタルヒューマンが一方的に会話をして、コミュニケーションをとるタイプです。日本では既に、アパレル会社のファッションモデルやインスタグラマーとして活躍しています。  

2. 双方向のコミュニケーションが可能なタイプ

チャットボットなどAIによる会話技術を組み合わせることにより、双方向のやりとりができるデジタルヒューマンの開発が進んでいます。このタイプは、本物の人間のように、顧客からの問い合わせに受け答えができます。AIの解析機能やカメラ認識技術を搭載すれば、見守り役としての活躍も可能です。

デジタルヒューマンのメリット

AIと組み合わせてコミュニケーションをとれるデジタルヒューマンは、人間のスタッフの代わりとして活躍することが期待されています。デジタルヒューマンを活用するメリットを見ていきましょう。

人間味のある接客ができる

人間らしく顧客とコミュニケーションをとれるのが、デジタルヒューマンの最大のメリット。チャットボットによる対応では、必要な情報は引き出せるものの、細かいニュアンスを伝えるのが難しいという問題がありました。

顧客の満足度を高めるには、感情のつながりも重要です。デジタルヒューマンは、人間に近い見た目やしぐさ、抑揚のある声でコミュニケーションをとれるため、顧客との間に感情レベルのつながりを持てます。

人件費などのコストを削減できる

デジタルヒューマンを導入することで、人件費などのコスト削減が可能です。1回の研修で学習するので、育成する時間や費用も抑えられます。24時間365日稼働し、常に顧客対応ができるのもメリットです。

サービスの質を均一化できる

AIを用いたデジタルヒューマンを活用すれば、サービスの質を均一化できます。複数の人間スタッフの場合、知識やサービスの質にばらつきが生じてしまいます。また、担当者によって育成時に伝える情報が異なることも。しかし、デジタルヒューマンなら、データに基づいた情報で対応するので、常に同様のサービスを提供できます。

企業価値が向上する

文字だけのチャットボットに変わりデジタルヒューマンが接客することで、顧客の満足度が上がり結果的に企業価値を向上させることにもつながります。小売業などで導入した場合、ショッピングの楽しさや心地良さを顧客に実感してもらえます。

常に満足度の高い顧客対応をすることでリピーターも増え、売上の向上にもつながるでしょう。今後、EC市場のWEB接客においても期待が寄せられています。

デジタルヒューマンのデメリット

AIを搭載したデジタルヒューマンは、継続的な学習が不可欠です。そして、そのためのコストや対応を考慮する必要があります。デジタルヒューマンのデメリットについても確認しておきましょう。

初期費用・運用費用がかかる

デジタルヒューマンを導入するにあたって、システムやサービスの入れ替えといった初期費用がかかります。AIは継続的にアップデートをする必要があり、運用にもコストが発生します。AIに対応させる内容の追加やシステム改修にも費用がかかるため、導入を検討する際は費用対効果も考慮しておきましょう。

イレギュラーな対応が困難

蓄積した過去のデータをもとに行動するデジタルヒューマンには、イレギュラーな対応に弱いといったデメリットもあります。

接客においては、AIが学習を重ねることで、質の高い顧客対応が可能に。しかし、過去に例がない内容は学習をしていないため対応ができない可能性があります。イレギュラーな対応が必要な場合は、有人対応に移行するといった方法をとる必要があります。

デジタルヒューマンの課題

メリットが多く導入が進むデジタルヒューマンですが、人間に近い容姿を目にした際に嫌悪感や恐怖感を感じる人も少なくありません。この現象は「不気味の谷」と呼ばれます。中途半端に人間に似ていると嫌悪感を持たれやすいといわれているため、好感を持たれるようになるには、本物の人間と同じレベルのコミュニケーションができるようになる必要があるでしょう。

こういった課題を克服することがまだ困難であることから、あえて人間とは遠い容姿のアニメキャラクターや、ロボットのようなアバターを使うこともあるようです。また、相手の特性に応じてコミュニケーションができるような模索もされています。

デジタルヒューマンの活用事例

デジタルヒューマンは既に、ショップスタッフやアシスタント、アドバイザーとして活用されています。最後に、デジタルヒューマンの活用事例を紹介します。

活用事例①携帯電話ショップの接客スタッフ

イギリスの大手携帯会社では、接客スタッフとして女性のデジタルヒューマンが活躍しています。笑顔で来店客を迎え、要望に流ちょうな会話で対応。簡単なタスクは最初から最後までこなしてくれるため、人間のスタッフはより差し迫った案件に集中できます。

活用事例②観光ツアーガイド

観光の充実感を高めるのに期待されているのが、デジタルヒューマンを活用したツアーガイド。個人旅行の場合でも、マンツーマンで説明してくれる観光ガイドがいると心強いものです。

例えば、コンビニエンスストアに設置されたQRコードを携帯でスキャンすれば、デジタルヒューマンが表示されるといった活用事例もあります。地元の人と同じような話し方ができれば、感情のつながりも生み出せます。

活用事例③銀行の住宅ローン申請アシスタント

オーストラリアのデジタルバンクは、住宅ローン申請時のアシスタントにデジタルヒューマンを導入しています。顧客は昼夜を問わず24時間365日、住宅ローンの申し込みについての質問に回答してもらえます。

活用事例④家電量販店のショッピングアシスタント

商品を選ぶ際のアシスタントとして、デジタルヒューマンを導入している家電量販店もあります。商品説明以外のやりとりも楽しめるのも魅力です。

活用事例⑤公衆衛生アドバイザー

新型コロナウイルス感染症のヘルスアドバイザーとしてデジタルヒューマンを導入した例も。アメリカ疾病管理予防センター(CDC)と世界保健機関(WHO)のデータをもとに、安全に過ごすための方法をアドバイスしてくれます。英語を始め、日本語・スペイン語・ポルトガル語などさまざまな言語での会話が可能です。

デジタルヒューマンで質の高いサービスの実現を

AIを搭載しているデジタルヒューマンは、人間味のある双方向のコミュニケーションが可能です。人件費の削減やサービスの均一化、顧客満足度の向上といったメリットがある一方、導入の際には、AI学習のアップデートやイレギュラーな対応をどうするのかといった点を考慮する必要があります。今後より技術が発展すれば、課題も改善され、デジタルヒューマンによってより質の高いサービスが実現するでしょう。

IT業界のトレンド【ジェネレーティブAI】とは?メリットや活用事例を解説

ジェネレーティブAIとは、革新的なアウトプットを生み出す機械学習の手法のこと。AIにより時間短縮やコストの削減、創造的な製品開発が可能になるため、幅広い分野での活用が期待されています。

※記載の情報は、2022年11月時点の内容です。

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