2023年11月29日 更新

アントレプレナーシップとは?注目を集める背景や必要な能力、育成方法を解説

アントレプレナーシップとは、新規ビジネスを創出するために必要な精神や姿勢のこと。起業家のみならず、一般のビジネスパーソンにも求められる能力です。アントレプレナーシップを育成することが、企業の成功やイノベーション創出につながります。アントレプレナーシップが注目されている背景、必要なスキルや能力、育成方法について紹介します。

アントレプレナーシップとは?

アントレプレナーシップ(entrepreneurship)とは、新しい事業を創造し、リスクに挑む精神や姿勢のことを指します。日本語では「起業家精神」と言われることもありますが、起業家のみならず企業成長のために、ビジネスパーソンにも求められる重要な能力です。

20世紀前半の著名な経済学者ヨーゼフ・シュンペーターは、「イノベーションを行う当事者」を指す用語として、またハーバード・ビジネス・スクールのハワード・スティーブンソン教授は、「コントロール可能な経営資源を超越し、機会を追求する精神」と定義づけています。

アントレプレナーシップが注目を集める背景

雇用形態の変化やグローバル化、予測が難しい未来に対応するためにアントレプレナーシップを育むことが必要とされています。注目されている背景を見ていきましょう。    

年功序列制度から成果主義への移行

以前は終身雇用を前提に新卒後に入社した企業で働き続けることが一般的でした。しかし現在は成果や能力主義へと移行しつつあり、労働市場は流動化し転職も珍しくありません。

企業が成長するためにも指示を待っているのではなく、主体性を持って革新に挑戦し、成果を残せる人材が必要とされています。

​経済のグローバル化

経済のグローバル化に伴い、より広い市場を求めて海外へビジネス展開をする日本企業も増えています。日本企業が成功するには、急速な変化を遂げる世界市場で競争に打ち勝つ必要があります。そのためには、市場変化に柔軟且つすばやく対応することが重要です。国際社会の動きを見据えて、チャレンジできるアントレプレナーシップを持つ人材が求められています。

予測困難なVUCAへの適応

世界経済は2010年代以降、行き先を予測するのが困難なVUCA(ブーカ)時代に突入したとされています。VUCAとは、「Volatility:変動性」「Uncertainty:不確実性」「Complexity:複雑性」「Ambiguity:曖昧性」の頭文字を使った造語です。

経済のグローバル化やIT化が進む中、企業は社会の変化に迅速・柔軟に対応する必要があります。トップダウンの意思決定だけではなく、現場での判断も重視することが望まれます。そのため、自発的に行動しイノベーションを創造できるアントレプレナーシップを持つ人材が求められているのです。

【VUCA(ブーカ)】とは?VUCA時代に適応するための術を解説

VUCA(ブーカ)とは、先行きが不透明で予測困難な状況を指す言葉で、今の社会を表すものとして注目されています。…

アントレプレナーシップに必要な能力

創造性のみならず、マネジメントや責任感などリーダーとしての資質やスキルを持つことがアントレプレナーシップに求められます。必要なスキルや能力を5つ紹介します。

創造力

前例のない新たなプロジェクトで成功をするためには、イノベーションを生み出せる創造力が必要です。変化が激しく先行き不透明な現代社会では、固定観念を覆すようなアイデアが求められます。そのためには、時流や市場の変化をそばやく読み取る能力も必要でしょう。

リーダーシップ

リーダーシップは、アントレプレナーにとって欠かせないスキルです。新規ビジネスは、先行きが読めずに進めるのが難しいことも。リーダーが目標達成に向けてビジョンを示し、グループを率いることが重要です。

責任感

新規事業の開拓や既存事業の市場拡大のプロジェクトを担うには、責任感のある人物でなければなりません。前例のないプロジェクトに挑む際には、さまざまな壁にぶつかることもあります。他に責任を押し付けず自分の責任として失敗を受け止め、リーダーとして信頼を集めながら、次の成功へつなげることが求められます。  

マネジメントスキル

多様な意見をまとめて調整するマネジメントスキルも必須。新たなイノベーションに挑みプロジェクトを進める際に、1人でできることは限られています。チームの力を最大限に発揮するためには、意見を調整しながら進行する必要があります。また、メンバーの共通認識を高めることでモチベーションも保ちやすいでしょう。

人脈を構築する能力

ビジネスチャンスを最大限に生かすには、社外の人脈から情報をキャッチアップすることも大切。社外から適切なアドバイスをもらったり、仕事の受注につなげたりなど、人脈の多さは事業の成功に直結します。新規事業を進める際には、特に多方面からの情報のキャッチが重要です。

アントレプレナーシップを育成する教育機関

最近ではアントレプレナーシップの教育を提供する大学が増加中です。起業やベンチャーのスタートアップに関する講座や、アントレプレナーシップ学部を創設し専門的に手掛ける大学もあります。

また、複数の大学が文部科学省の「次世代アントレプレナー育成事業(EDGE-NEXT)」プログラムと連携し、人材育成の促進を始めました。経営大学院などのビジネススクールでも、MBAのプログラムを通じてアントレプレナーシップに関する教育を提供しています。

アントレプレナーシップを育成する方法

企業においても、チャレンジしやすい環境作りをすることで、アントレプレナーシップを育成することができます。最後にアントレプレナー育成の具体的な方法を紹介します。

失敗を許容する環境を作る

失敗を許容する社内風土の醸成や環境作りが必要です。失敗が認められない環境では、既存の考え方から脱却できず、新規事業の推進が停滞します。失敗した技術を使い、思いがけない商品やサービスが生まれることも少なくありません。  

ビジネスプランコンテストを開催する

従業員のアントレプレナーシップを育成するために、ビジネスプランコンテストを開催している事例もあります。コンテストでは、グループで新規事業の立案・予算・利益・実現性・将来のビジョンなどを細かく策定し、審査員によって評価を受けます。

評価が高いビジネスプランは事業化に至るケースも。事業化できない場合でも、創造力や調整力、情報収集力、積極性などアントレプレナーシップに必要とされるスキルを身につけることが可能です。

従業員に裁量権を持たせる

自由な発想で自発的に仕事に取り組めるよう、従業員に仕事の裁量権を持たせることも大切。自分の仕事に責任感を持つようになり、主体性を持って考えて行動することができるようになります。心にもゆとりが生まれ、仕事とプライベートの双方が充実しやすいため、モチベーションの向上にもつながるでしょう。

アントレプレナーシップの研修を活用する

研修を通してノウハウや実例を知ることで、具体的なイメージがしやすくなります。育成講座やセミナーを開催している民間企業も増えています。スキルアップ支援制度の1つとしてサポートすると、興味のある従業員が学びやすいでしょう。高度なスキルが身につけば、企業内での活躍も期待できます。

アントレプレナーシップの育成がイノベーションにつながる

激変する現代社会で企業が成功するためには、イノベーションを創出するための行動や思考が求められます。それにはアントレプレナーシップを養うことが今後益々重視されていくでしょう。教育機関や企業内での育成、研修を通してアンプレナーシップの向上を測りましょう。    

※記載の情報は、2023年12月時点の内容です。

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